インフレの種類 2013 11 30

 一口に「インフレ」と言っても、
実は、インフレには種類があります。
 今の日本は、コスト・インフレの状態に近いと言えます。
「コスト・プッシュ・インフレーション」とも言います。
 これは、生産費用の上昇によるインフレ、
つまり、原材料や燃料費の上昇によるインフレです。
 現状の経済状況は、
消費者が商品を買いたいという「需要」(総需要)が、
生産者である企業が作る商品の「供給」(総供給)を
上回るという「需要超過の状態」で起こる、
「ディマンド・プル・インフレーション」ではありません。
 政府や企業は、インフレと言っても、
ディマンド・プル・インフレーションを望んでいるでしょう。
 現状では、コスト・プッシュ・インフレーションとなっています。
これは、不景気の原因や政府への不満になります。
 時々、「今の物価上昇は、
給与の上昇がない物価上昇だ」という報道を見かけます。
 しかしながら、給与(賃金)は、企業の生産費の一部ですので、
賃金の上昇は、コスト・プッシュ・インフレーションの原因になります。
 要するに、マスコミは、こう言いたいのかもしれません。
「給与の上昇がない→消費者の購入意欲の低迷→需要の不足」
 つまり、今の日本では、
「需要の不足」と「コスト・インフレ」が併存する状況にあり、
これは、「よいインフレ」ではないと言いたいかもしれません。
このような状態は、「インフレにもデフレにもならない状態」かもしれません。
 さて、「需要の不足」は、なぜ起こるのか。
今の日本では、諸説あります。
「買いたいものがないから」
 昔の日本では、「テレビを買いたい、
自動車を買いたい、冷蔵庫を買いたい」という強い需要がありました。
 これは、今の若者には、わからないと思いますが、
「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画を見れば、よくわかるでしょう。
 今の日本では、こうした商品は、
消費者に広く行き渡り、しかも耐久年数が長いので、
需要は低いと言えるでしょう。
「人口構成の変化」
 今の日本は、人口は、ほとんど減っていませんが、
人口構成が大きく変化しました。
つまり、昔の日本と比べて、高齢者層が非常に増えました。
 はっきり言って、年を取ると、
「あれが買いたい、これが買いたい」という欲望はなくなります。
 これは、高齢者がケチだということではなく、
年を取れば取るほど、世の中に対する関心がなくなってくるのです。
 消費意欲が強い若者世代が減って、高齢者世代が大幅に増えると、
やはり、「需要の不足」は否定できないでしょう。
 その他にも、いろいろありますが、
今日は、このぐらいで、やめておきます。
 さて、もうひとつ書いておきましょう。
いわゆる「アベノミクス」については、
株価上昇がよく言われますが、
これが、景気回復に役立つか。
 おそらく、アメリカと違って、
日本では、それほど効果がないでしょう。
 日本と比較すると、アメリカの家計は、
株式保有率が高いので、「資産効果」が期待できます。
 たとえ給与の上昇がなくても、
株価の上昇により、家計の資産は増えますので、
その結果として、家計の消費意欲は高まります。
 日本の家庭では、アメリカと比較すると、
株式保有率が低いというより、「ゼロ」に近いので、
株価上昇による「資産効果」によって、
家計の消費意欲が高まることはなく、
当然に、「需要」の増加は、あまりないでしょう。
 政府は、最近になって、
「NISA」(小額投資の非課税制度)を始めますが、
株価が大幅に上昇した後で、「NISA」を始めても、
順番が逆だと思います。
 それとも、政府は、今後も「株価上昇」が続くと思っているのでしょうか。
しかしながら、株価の予想は、天気予報よりも、精度が低いと言われます。
 とかく、アメリカの株価上昇は「人工的」と言われます。
アメリカの中央銀行であるFRBが、大胆な金融緩和をしても、
それが融資に回らず、株式市場に直行してしまうと言われています。
 もちろん、それが誤りとは言えません。
アメリカでは、株価上昇による「資産効果」が期待できますので、
変則的ではありますが、
このような景気対策もあると思います。
 その上、FRBは、市場からMBS(住宅ローン担保証券)も、
大量に買い取り、景気対策には「抜かりない」という状態です。
 アメリカでは、政争に明け暮れる連邦政府と連邦議会を見ながら、
FRBが、景気対策の主役となっています。
 これは、経済評論と研究に徹した日本銀行と対照的でした。
日本銀行の場合は、自然と「経済評論家」になってしまい、
経済に対する「傍観者」になる傾向があります。
 今の日本銀行は、景気対策の主役になろうとする意欲が感じられますが、
これは、変則的なものであり、
本来であれば、政府が景気対策の主役であるべきです。





































































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